介護福祉士が知っておきたい口腔ケア

歯科のリハビリテーション領域

介入

 

介入とは、関わり方という意味です。

 

治療も介護も、リハビリテーションも、
すべて患者さんや対象者への関わり方であるといえます。

 

医学モデル

 

介入の代表的なものとして挙げられるのが「医療」です。

 

そして、医療には、絶対的な基準が必要です。

 

基準がなければ、
患者さんや入所者に信用してもらうことができません。
また、安心して受診してもらったり、
入所してもらうこともできないでしょう。

 

その基準が病理指向的なアプローチで、
原因を追究し、治して行こうとする考え方が「医学モデル」です。

 

医学モデルは、原因があって、
その結果、病気が発現するという考え方で、
現代医学の基本となっている考え方です。

 

たとえば、結核菌という病原菌があります。
この結核菌が感染すると、結核という病気になります。

 

患者さんが病院に診察に来ると、
医師は医学の手法を用いて、
咳が止まらない、微熱が続くなどの患者さんの症状と、
レントゲン診査で影が見える、ツベルクリン反応が陽性、
たんから菌を検出したなど、各種の診査や検査結果の組み合わせによって
原因や病名を特定し、治療方法を選びます。

 

この場合の、結核の場合は、薬物療法が中心となるでしょう。

 

このように、医学は原因と結果の関係を
明確にしておくという役割を持っています。

 

この関係が明確であればあるほど、
病気として理解されている疾患であるということができます。

 

医学の教科書には、この原因と結果の関係がぎっしり詰まっています。

 

手術の技法や薬剤などは、どんどん進歩し新しくなりますが、
確立した医療モデルは古くなることがありません。

 

そして、名医と呼ばれる医師は、
知っている原因と結果の組み合わせの数が
多いということもできると思います。

 

ただ、最近は、生活習慣病など、
原因と結果が明確ではない疾患も増えています。

 

生活習慣病は、
患者さんが個別に持っている遺伝的な要素に加えて、
生活環境が病気の発生の引き金になっているような疾患です。

 

薬を飲めば治るという問題ではなく、
手術をすれば回復するという単純な問題ではありません。

 

ですが、生活習慣病は、動脈硬化を引き起こし、
脳梗塞や心筋梗塞などの病気のリスクを高めます。

 

障害モデル

 

障害モデルは、医学モデルと双璧となっているモデルです。

 

「疾病」→「機能障害」→「能力障害」→「社会的不利」
という障害モデルは、1980年にWHOから発表され、
よく利用されてきたものです。

 

これは機能指向的なアプローチをとります。

 

機能的な障害や、機能の低下に対して適用されるため、
リハビリテーション領域には重要な考え方になるといえるでしょう。

 

@ 機能障害

 

機能障害は、原因となっている疾病によって、
直接的に障害を受けたものです。

 

機能障害や能力低下、社会的不利の原因にもなります。

 

つまり、階層構造を持つモデルです。

 

機能障害に対しては、
理学療法や作業療法などの訓練が行われます。

 

A 能力低下(能力障害)

 

機能の障害によって発生する障害です。

 

たとえば、「食べられない。」というような
能力低下(能力障害)などがあります。

 

能力低下に対しては、道具や環境調整などで
代謝機能を獲得させます。

 

歯科では、義歯の治療がこれにあたり、
介護食を工夫するときにも、
能力低下に対応していきます。

 

B 社会的不利

 

機能障害や能力低下によって、
社会生活を営むことに不利が生じるものを「社会的不利」といいます。

 

たとえば、歯を失ったため、
噛むことができず、友人たちと外食ができないというような場合も
社会的不利に該当します。

 

このような社会的不利を払拭し、
普通に生活することができるようにすることが、
リハビリテーションの究極な目的であるといえるでしょう。

 

もちろん、一般的な目標は、
日常生活の自立と社会復帰ですから、
介護の目的とも一致しています。

 

また、機能障害や能力障害、社会的不利によって、
心理的に障害を受けることもあります。

 

心理的障害は、「目に見えにくい障害」でもあるため、
注意することが必要です。

 

生きる意欲をうしなっっている状態は、
自立支援も社会復帰も遠い問題であるといえるでしょう。

 

介護スタッフは、身体面のサポートだけでなく、
心理面でのサポートも重要な仕事になります。

 

新しい障害モデル

 

WHOから2001年に発表された障害モデルは、
障害モデル2(ICIDH-2)と呼ばれています。

 

この新しい障害モデルの考え方は、
健康状態が機能障害、活動、参加の3項目に影響を与えるというものです。

 

しかも、相互に影響を与え合うことが明記されています。

 

以前の障害モデルでは、社会的不利まで
一直線に進むイメージでした。

 

ですが、新しいモデルでは、
健康状態が個人の障害と相互に関わる形が表現されたため、
より確実に近いイメージになったということができるのではないでしょうか。

 

「活動」と「参加」が「個人」を表現する場合、
重要なキーワードとして取り上げられたことに注目すべきで、
ADL向上や自立支援の目標とも考えることができます。

 

旧モデルでは、医療、リハビリテーション、
介護の担当が分けられていたように思います。
ですが、新モデルであれば、
すべての専門職が1人の患者さん(対象者)にむけて
共同で対応するという図式が明確になっています。

 

このような新しいモデルを自分の仕事に当てはめて考えることで、
今の自分を見直すことができたり、
これからの展開を考えたりすることができるでしょう。

 

歯科治療の位置づけ

 

2つのモデルは、相互に関連します。

 

歯科にいては病理学的な治癒が望めない部分が大きいため、
機能障害、能力低下、社会的不利、心理的障害に
対応が求められます。

 

このことから、歯科医療のかなりの部分が
リハビリテーションの側面を持っていることがわかります。

 

廃用症候群

 

筋肉は、動かさない状態でいると、
萎縮して動きが悪くなります。

 

動きが悪くなってくると、「動かない」から「動けない」という
悪循環をうむことになります。

 

口の周りの筋肉も同じで、唇や頬の筋肉も
使っていないと廃用性の萎縮をおこし、
機能が低下してしまいます。

 

義歯の装着をすることによって、
周囲の筋肉を活性化したり、廃用性萎縮を
予防する効果があります。

 

つまり、噛むことだけのために義歯を装着するわけではないのです。

 

義歯は、リハビリテーションの道具です。

 

そして、このリハビリテーションの分野で注目されているのが
「摂食・嚥下リハビリテーション」です。

 

摂食・嚥下障害

 

動物の最も基本的な機能の一つに「食べる」という行為があります。

 

そして、「食べる」という行為は、生命維持の源でもあります。

 

このような食べるという機能が障害を受けてしまうのを、
「摂食・嚥下障害」といいます。

 

摂食とは、食べる行為全般を示し、
嚥下とは摂食の後半、つまり飲み込む部分を指しています。

 

摂食・嚥下障害が起こる原因としては、
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が誘因になる場合と、
筋肉や抹消の神経などが誘因になる場合があります。

 

最も多い可能性としては、脳血管障害が最も高いといえるでしょう。

 

食事の介助をしていると、「むせ」で食事を一時中断し、
落ち着くのを待ったり、
背中をたたいたりさすったりしてしてあげる場面に出くわします。

 

これは「誤嚥」の症状です。

 

ただし「むせ」のない誤嚥もあるので、
注意しなければなりません。

 

誤嚥はとても恐ろしい状態です。

 

日常生活の中にありがちな「むせ」なのですが、
この「むせ」を起こす食事が命に関わることもあります。

 

食事を安全に楽しんでもらえるようにすることは、
介護職員、介護のスタッフにとってとても重要です。

 

要介護者の状態をしっかり観察し、
変化に早く気がつくようにしましょう。

 

もし、むせていたら「あら、大変!」、「困ったわ。」
というだけで終わらせることなく、
看護師や主治医に確認が必要ではないかという
提言を行っていくことが必要です。

 

介護職に必要なことは、
医療やリハビリテーションなど、
自分の専門外の分野については
正しい知識を持っていること、
その道の専門家に伝えるルートや方法を知っていることです。